故郷と祖父と俺
久々の連休で
久々の里帰り
小さなタバコ屋で葉巻を2本買ってから祖父の墓参り
久々に会う『亡くなった祖父』
最近は夢にも出なくなったよな
『当たり前よ、お前さん、いつまでもこっちに残る死人がいるかってんだ』
嗅ぎなれたウィスキーの匂いをさせながら、姿も見せずに彼は答える
俺は静かに葉巻をつける
『な、なんだ!?随分いい葉巻買ってきたな!』
久々だからな、と俺は笑う
『なんかあったんか』
俺はまだ何も言ってない
『これは俺もたまに吸ってた』
だから買ったんだ
『人間関係で何かあった時にな』
・・・そいつは知らなかったな!
『ほら、なんかあったんだろ?クソガキ』
意地の悪いくそジジィだな
・・・俺は、1人になったよ
その一言で、彼は察したようだ
『前に進まなくたっていい。0と1の狭間でもがいて、必死に流れに逆らうお前さんでいいんだ。歩幅を合わせられる人間なんて、ごく少数さ。お前さんも俺も、そうはなれなかった。ならなくていいんだ。お前さんと、歩幅が自然と合う世界の人と、一緒に歩きな』
俺は強くなりたかった
『いや?弱くていいのさ。自分の弱さを受け入れなきゃ、他人の弱さも受け入れられない。人の弱さを受け入れられないような奴は、自分の弱さすら見えない、受け入れられないような可哀想な人間だ。どんな事情があったとしても、どうやって生きるかは自分次第だ。お前さんはお前さんにしかできない生き方をしな』
俺にしかできない?
『そうさ。やりたいことをしな。1度しかないんだから、人生は。』
死人に言われると、その言葉がいちばん重い気がする
俺は今まで、『こうしなければならない』と思って生きてきた
男なら、優しくあれ、強くあれと
これからは、『こうしたい』と思える生き方をしよう
したいことをしよう
もう俺は、何も迷わない