夢の話
最近、一人の男の夢を見る
罪を背負い、夢を追い、その果てに総てを知った男の話
何日もその道を見せられ、それが何なのかを知ったある日、その男と夢で対面した
血のシミが着いたシャツ
それは返り血のようで、服の内側から着いたシミのようにも見えた
黒いズボン
所々擦り切れて、穴が空いたボロボロなズボン
真っ白な髪
中途半端に伸びたその髪は、暗闇の中でも光って見えた
顔を見て、ああ、やっぱりか、と思う
やはり、『知っているけど、まだ知らない』男だった
鋭い目つき
そこからは明らかな敵意を感じた
「やはり、果てに見る相手はお前、なんだな」
男は口を開く
悪かったな、そっちだって毎日どうでもいいものみせてんじゃねぇよ
「いずれ至る道だとしても?」
そうだ、そうなんだ
夢を見て、その過程で全て失って、1人になっても諦めず突き進み、叶えた夢は、叶えたかった理想とは全く違うもので、そしてアイツにも会えず、死ぬことも許されずにここに立っている
そうだ、この男は、俺なのだ
近い将来、至る自分
その可能性のひとつ
「借り物の夢、理想、想い・・・それを突き通して、お前もこうなる。誰も救われず、誰も喜びやしない。全てを失い、誰一人残らない」
彼はそう嗤う
それでも、進むさ
結局、それしか道はない
それに、見せてくれた道と、俺の歩いてきた道には、明確な違いがあった
『誰も救えなかった』お前の道
『誰かは救えた』俺の道
小さいけれど、確かな差がそこにはある
「辛い道を歩くぞ?」
生きてれば辛いこともある
「地獄を見ることになるとしても進むか?」
地獄なら、最初に見たじゃねぇか
あいつのいない世界
既に地獄みたいなものじゃないか
やがて至るかもしれない道だとしても
後悔なんてしない
笑って生きると決めたのだから