WENさんのblog

Twitterでは伝えきれないことを書きます。閲覧は自己責任でお願いします。

ある日見た夢(長文注意)

大学受験を控えた時期に、変な夢を見た

見知らぬドアの前に立っていた

マンションにあるような、金属製のドア

無意識のうちにドアノブを捻り、ドアを開けた

知らない場所なのに、何故か懐かしくて

俺は「ただいま」と言った

「おかえり」

知ってる声が聞こえた

もう二度と会えるはずのない、聞くことの出来ないはずの声

リンの声が聞こえた

彼女は俺に抱きついた

懐かしい感覚

生前、一度しかしてくれなかったのだが、それだけに鮮明に覚えていた

「あーぁ、こんなとこまで来ちゃってさぁ」

と彼女は言った

どういう意味だよ、それ

「おかしいでしょ?君はまだ生きてるだろっ」

あぁ、そうか

ここは死んだ人しか来ちゃいけない世界

そう言いながらも彼女は中に招き入れた

「いいところでしょー?リビングはこっちー。あっちの部屋は・・・」

と間を作って、いたずらっぽく笑いながら言った

「君の部屋っ」

あるんかい!と思わず突っ込んだ

 

リビング・ダイニングにはあまりものが無かった

テーブル、椅子、そして何故かパソコンだけが置いてあった

「テレビは見ないけど、情報は欲しいからねぇ。私の情報網は馬鹿にならないよ?」

お前、スマートフォンって知ってるか?

「何それ!知らない!」

大したことない情報網だ

 

初めて彼女がお茶を入れてくれた

飲んでいると視線を感じた

味の感想でも聞きたいのか?と俺は彼女を見るが、そういう風には見えなかった

「笑うようになったね」

と彼女はしみじみ言った

彼女が知っている俺は、三、四年前の、笑わなかった俺

そりゃあそうだ、お前のせいなんだから

「でもそれを言ったらお前もだろ?」

彼女の見た目、それは明らかに俺と同じくらいの歳

俺の知らない彼女

「それこそ当たり前でしょ?死んだって歳はとりますーっ」

 

「で?なんで君はここに来たのかな?まだ生きてる君が、こんな所に」

「知らないよ、俺が聞きたい」

と答えたけども、きっと疲れたから、なのだろう

今までの自分とは違う自分を「演じていた」のだから、辛いし疲れた

無意識に死にたいと思うほどに疲れていても不思議じゃなかった

「たしかに君の生き方は辛いんだろう。そしてそれは私のせい。無理かもしれない、無茶かもしれない、でも私はそれが無駄にならないことを知っている。」

そこまで言って、ため息混じりに続けた

「いや、まぁ、わかっていたのに死んだんだけどさ」

俺はこいつの夢を叶えると言った

でも叶えることなくここに来た

辛かったし疲れた

でもこれは、心残りであり、明確にやり残したことであり、未練だ

まだ死ねない、そう思った

椅子から立ち上がり、少し驚く彼女にこう言った

「ごめん、まだやり残したことがある」

 

玄関で靴を履いていると、彼女がやってきてこう言った

「遺書、読んでくれた?」

遺書って、あのメールのことか?

「違う違う、私の机の引き出しの中に入ってるから、読んで?」

机がお前の家に残ってたらな

「また遊びに来てね?」

その度に死にかけなきゃなんねぇとか身体がもたねぇよ

「たまには思い出してね?」

その言葉に、無意識に、彼女を抱きしめる

「思い出さねぇよ、覚えてる、ずっと。忘れたことなんてないんだから、思い出すことなんてない」

きっと、生きているうちに会うことはもうないだろう

この感覚を刻み込むように、長く、強く抱きしめる

暖かく、柔らかいこの感覚

「次、また来ることがあれば、飯作ってやるよ」

「料理出来るようになったの?うわー、ムカつくわ、ますます女子力に差がつくなぁ。君にできないことは無いのか」

「裁縫」

「あ、それは結局出来なかったんだw」

「うん、それは頼むわ」

「うん、わかった」

そんな会話をして、離れた

ドアノブに手をかけ、「ただいま」と同じくらい彼女に言ったことのない言葉を口にする

「じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 

覚めて欲しくなかった夢

というかあれは夢だったんだろうか

いや、きっと夢だったんだろう

遺書はちゃんとあった

彼女の母親すら知らなかった

俺に対して書かれた部分だけ抜粋すると、こう書かれていた

『私はいない。でも私はそばに居るよ。だから、私が見たかった世界、私が叶えたかった夢を見せて欲しい。勝手なお願いだけど、君に託すね。あなたは大好きな人。だからこそ、あなただけに託します。』

 

連れて行くよ、どこまでも