WENさんのblog

Twitterでは伝えきれないことを書きます。閲覧は自己責任でお願いします。

名前のない物語

 

寒さに目を覚ます

ぼーっとする頭を無理やり起こしながら、カーテンを開ける

そこは一面銀世界

とても綺麗だったのを覚えている

それが、俺にある最初の記憶

あれは4歳の頃だっただろう

あの頃は、目に見えるものすべてが輝いて見えた

体が弱かった俺にとっての、ただ一つの楽しみ

見て、感じること

それだけが、俺に許された唯一のことだと

そう思って生きていた

あと何年生きれるんだろう、そんなことを考え始めた7歳

小児科、内科、精神科

よく世話になったのを覚えている

体も弱かったが、それと同じくらい心が弱かった

小学6年にして、体重はわずか30キロ

それでも『生きていた』ようだ

 

そんな体で、生きる希望すらなかった俺だが、無謀ともいえる賭けに出た

友人の紹介で、ボクシングジムに行ったのだ

三日間だけ体験できる、というものだった

もちろん、体はもたなかった

それでも、体を動かした

両親も兄弟も知らない、その友人と俺くらいしか知らない三日間

その三日間が、俺の体を変えた

直ぐに変わった訳では無いが、少なくとも欠席日数は減ったと思う

体的にも余裕が出てきたから、塾に行くこともできた

 

そしてそこで、一番俺を変えた人に出会った

あいつと一緒に居た期間は3年間だけだった

その3年間はとても楽しかった

でも、恋人っぽいことはあまりしなかった

お揃いのものもなかった

いや、いらなかった

一緒にいた時間、記憶、思い出は、お揃いのものだから

 

失ったことは悲しかったし

不幸せだった

でも、今の俺は、確実にアイツがくれたものだ

夢も、自分も、全部アイツがくれたんだ

俺があげられたものは何もない

けど、これから俺が起こす行動全て、アイツに向けて贈るプレゼントだ

夢を叶えてやること

理想を現実にしてやること

精一杯生きること

 

これから綴ることになる、まだ白紙のこの物語

名前すらない

ただ、自分が覚えている最初の記憶

今日の朝、同じ景色を見た

アイツに向けて贈るこの贈り物が、あの時みたいにすべて輝いて見えたらいいな

なんてことを思いながら、この物語を綴ることにしよう