WENさんのblog

Twitterでは伝えきれないことを書きます。閲覧は自己責任でお願いします。

葬式の形

先日、親戚のおじさんの葬式に行った

 

2月のまだ冬の冷え込みが残る某日の福島

 

どうしてこの一族は揃いも揃って寒い時期に亡くなるのか

 

なんて話を車で母としながら葬儀に直行する

 

鬱と癌

 

この二つの病気を抱え

 

それでも余命宣告よりは長く生きた

 

人と話すことの楽しさ・大切さ

 

それを俺に教えてくれたおじちゃん

 

亡くなったと聞いても涙は出なかった

 

悲しかった

 

もっといっぱい話したかったし

 

もっといっぱい教えて欲しかった

 

コロナ禍じゃなければと

 

何より悔しかった

 

成人してから一度も一緒に酒を飲めなかった

 

『また約束、守れなかった』

 

一緒に酒を飲もう

 

なんて簡単な約束が

 

いつも何故か守れずにいる

 

本当はそれこそ、こういう状況だ、行くべきでは無いのだろう

 

でも、『行かない訳にはいかなかった』

 

行かなかったら絶対後悔するってわかっていたから

 

葬儀会場に着くと、検温・消毒

 

その最中に、おじちゃんの娘の中の末っ子が走りよってきた

 

俺と同じ歳の彼女

 

久々に会ったが、とても明るくなって、とても綺麗になっていた

 

ある意味で『お互いを知り尽くした唯一の女の子』は、意外にも結婚していた

 

だからこその性格の変化、か

 

約10年

 

変わらない方がおかしいか?

 

まぁ、外見は変わらなかったが

 

その10年を埋めるように、俺たちは色んな話をした

 

『お父さんは奥にいるよ』

 

話も一段落したところで、そう言われ案内された部屋の奥に木の棺

 

小窓を開けると、やせ細った顔が見えた

 

『会いに来たよ』

 

その顔を見て、無意識にその言葉が出た

 

『美味い日本酒、教えてくれんだろ?』

 

いつかした約束

 

『いつか夢で教えてくれよ』

 

もう飲んじゃったかもしれないけど

 

その後、親戚全員と久々の会話をして

 

葬儀が始まった

 

葬儀後、火葬場に向かうバスの中で何故かは知らんけど、おじちゃんの長女次女の子供たちスマブラ勝負を挑まれ

 

4試合くらいボコボコにし終わった時にちょうど火葬場に着いた

 

焼いてる間、用意されたお弁当を食べることに

 

普通は、たぶんここで厳かな空気であまり会話もなく食べるんだろう

 

でも俺たちの『葬式の形』はここから違う

 

バカ騒ぎである

 

遺影の前にも酒を置き

 

バカ笑いしながら酒を飲む

 

何年経ってもこれだけは変わらない

 

この一族に生まれた男子は

 

誰に言われた訳でもないのに

 

みんなこうなのだ

 

『葬式で親戚が集まって目の前に酒があったなら宴会』になるのだ

 

死んだおじちゃんもそうだった

 

誰よりも笑って

 

誰よりも騒いで

 

誰よりも飲んだ

 

そんな彼の葬式だ

 

なおのこと、泣いて悲しんで厳かな空気で送り出す?

 

そんなのありえない

 

最期くらい

 

あの人が一番好きだった空気で送り出す

 

この先いくらだってこういうことがあるだろう

 

でも俺たちはいくらだって変わらずやるだろう

 

これが俺たちの葬式の形

 

その日の酒は

 

ちょっぴり塩味が強く感じる

 

いつもと違う特別な酒になる